水冷? 空冷? どちらがいいのか
エンジンオイルクーラーの水冷と空冷について考えてみたいと思います。
最初に結論を言ってしまうと、どららにもメリット・デメリットがあり、性能・コストパフォーマンス・レイアウトなど総合的に判断すると一概にどちらの方がいいと言うことは難しいです。当社では可能な限りその車に合わせた最適なタイプを設定するようにしています。
そのため、今回は性能面に絞って説明をしていきたいと思います。
物性について
まず、水冷は水、空冷は空気と冷却に用いる流体が異なり、それぞれが持つ物性が違います。
水と空気の物性の違いについて説明します。
水(20℃)
密度:998.2 kg/㎤
熱伝導率:0.602 W/m K
比熱:4182 J/kg K
空気(20℃)
密度:1.2 kg/㎤
熱伝導率:0.025 W/m K
比熱:1006 J/kg K
流体は、気体 ⇒ 液体 ⇒ 個体の順に熱伝導が良くなります。上記の物性の違いを簡単に説明すると、水は空気より20倍以上熱を伝えやすいということになります。
100℃のサウナと100℃のお湯をイメージしていただくと、同じ温度でも触れたときの熱の伝わり方の違いがわかると思います。
使用条件について
実際に使用する条件に近い状態で比較してみたいと思います。
水冷はエンジンの冷却水(メインホース使用)を、空冷はバンパー開口部正面に装着してフレッシュな走行風を冷却に用いた場合です。標準的な温度設定で車速160km/hで6000rpmとします。
※上記は水冷・空冷ともに冷却条件の一番いい状況を想定したものであり、この状況によるその他への影響は無視します。
水冷(エンジン冷却水)
温度:90 ℃
密度:971.8 kg/㎤
熱伝達率:0.678 W/m K
比熱:4205 J/kg K
流量:約160 ℓ/min
空冷(走行風)
温度:20 ℃
密度:1.2 kg/㎤
熱伝導率:0.025 W/m K
比熱:1006 J/kg K
風速:約10 m/sec
エンジン冷却水の流量は1分間でバスタブにお湯が溜まるくらいの量です。一方の走行風は車体形状により変わりますが、バンパー開口部正面の一番条件のいい位置でも、オイルクーラーの前面風速は車速の1/3程度の走行風となります。
この条件でオイルクーラーが同サイズとした場合、水冷は空冷の約3倍の放熱量になります。
性能面では空冷より水冷の方が優れている。
物性値の数値が空気より水の方が冷却に適していることに加え、使用する条件を含めて性能を考えると、エンジンオイルクーラーでは水冷の方が性能が優れているという結果になります。